私は「大きな社会の課題解決に挑む会社であること」、「不確実な状況下で事業づくりにチャレンジができること」に惹かれて新卒でVisionalに入社してから、約3年半新規事業でソフトウェアエンジニア兼プロダクトマネージャーとして手探りながらも事業開発に関わってきました。本記事では、その経験を元に、エンジニアから見たプロダクト開発における越境についてご紹介します。

これまでプロダクト開発を進める中で、事業の解決すべき課題にフォーカスするためには特定の役割のみに閉じているカタチでは実現できないと感じる場面が多くありました。世の中に価値あるプロダクトを提供するために、職種や立場にとらわれず、個々がオーナーシップを持って役割を染み出しながら、事業開発に向き合うということをここでは「越境」としています。

ここからは、私が「BizHint」で実際に行った「メールマガジン配信」における制作改善業務の具体的な体験と合わせ、越境のポイントをご紹介します。

2023年12月、株式会社ビズヒントの全保有株式をスマートキャンプ株式会社に譲渡しました。

「BizHint」について

「BizHint」は、生産性向上、組織強化、DXなどをテーマに決裁者向けのBtoBマーケティングを支援するプラットフォームとして、様々な事業課題へのヒントを提供するとともに、それを支援する企業を結びつけることで組織の進化を加速させることを目指しています。

そのため、企業の決裁者を支援するような質の高いコンテンツを制作するとともに、より多くの人にとって価値のあるコンテンツを届けることが重要です。

現在の「BizHint」に登録している会員様にコンテンツを届けるためのアプローチは複数ありますが、中でもメールマガジンの配信は最も多くの会員様が受動的に「BizHint」から情報をキャッチアップできる仕組みで、効率よくコンテンツを提供できています。今回は、この「メールマガジンの配信」における制作改善業務に着手しました。

越境するプロダクト開発のポイント

徹底的なユーザー視点を持つ

中長期的に持続可能な事業であるために、ユーザーにとって本質的な価値のあるものでなければ、事業としての提供価値に繋がらないため、徹底的にユーザー視点を持つことは持続的な価値提供を行う上では不可欠です。

ユーザーが求める価値とビジネスが実現する提供価値

カスタマーサクセスチームとの密な連携やユーザーインタビューの実施などどんなカタチでもいいので、エンジニア自身がユーザーの声に耳を傾け続けることがプロダクトの改善に直結すると考えています。

ユーザー視点を持って、インパクトの大きな課題解決をするには十分な業務理解が必要です。そこで今回は業務に対する解像度を上げるために、まずはメールマガジン制作メンバーに協力をお願いして、現状の業務のワークフロー図の書き出しや現状の理解と実運用との乖離がないかを洗い出すところからはじめました。

メルマガ制作業務フロー

リモートワークの際には、作業中の画面を共有してもらい、実際の制作業務に張り付いたり、PC画面を録画してもらい、すべての業務の言語化をしてシステムに落とし込めそうな部分を洗い出しました。

そうすることで、実際に開発者が見ている視点と利用するメンバーとの目線を揃えていきました。その結果、手作業で行われているノンコア業務がいくつか存在することが見えてきたのです。

表層の先にある本来の課題に基づく仮説を立てる

ユーザーの目線からの意見というのは、プロダクトを成長させる最も重要な要素の1つであるというのは前提ではあるものの、要望をそのまま鵜呑みして開発したら、本当はまったく違う課題だったということは少なくないです。

抽象度を上げて課題と向き合えているかどうか、より本質的な課題に対して解決策を導き出くことができているかどうかが重要です。(画像はブランコを例に顧客が本当に必要だったものについて説明したものです。)

顧客が本当に必要だったもの

参考:顧客が本当に必要だったもの

よって、以下のような手順で仮説を決定していきました。

  1. あるべき姿を描く
  2. 現在の姿を明らかにする
  3. そのギャップにある本来の課題をクリアにする
  4. それに対する効果的な仮説を立てる
仮説構築フロー

今回はあるべき姿としては、ユーザー(メールマガジン制作チーム)が最もコアなクリエイティブ(コンテンツ制作・訴求考案など)にフォーカスできている状態と置きました。

それに対して当時は、クリエイティブ以外にもメールマガジンのレイアウトを個別カスタマイズを行ったり、配信ミスが発生しないような手動チェックなどを行っている状態でした。

そのギャップとして課題は、ノンコア業務の肥大化であると考えて、1つ1つのノンコア業務がそもそも業務をなくせないか、なくせない場合はシステムで簡略化できないかを調査を行い、具体のアクションとなる仮説へと落とし込んでいきました。

具体的には、「メールマガジンのレイアウトを個別カスタマイズして構築するのに時間がかかる」という課題がありました。これに対して直接的な解決策を考えると、「レイアウトをより作りやすくする」や「よりやりたいことができるように自由度を高める」といったアプローチも考えることができますが、これからは本来の課題である「ノンコア業務の肥大化」といった課題に立ち戻ると「そもそもレイアウトを考えなくて良くする」といった解決策が生まれました。

レイアウト構成工数における本来の課題

「レイアウトをより作りやすくする」というアプローチをとった場合、レイアウトを個別最適化するためのコストはかかり続けてしまい、それ自体が課題となって再燃する可能性がありました。

そのために、実際にレイアウトを一律で汎用化させて配信するメールの内容のみにフォーカスすることによって、会員の開封率・クリック率に変化があるかどうかをフィジビリティでメールマガジンの配信を行い検証するなどをし、1つ1つの仮説を固めていきました。

テンプレートを用いた型化を行ない、最小限のアクションだけでメールマガジンが作成できるようにして、最もコアなクリエイティブ(訴求方法など)に対してリソースをフォーカスできるように設計しました。そして、カスタマイズ性を最小限にして、テンプレート化しても実際の開封率やクリック率が大きく変わらないことがデータから洗い出すこともできました。

併せてミスが発生しやすい配信予約の仕組みをワンクリックで行えるようにして、ヒューマンエラーによる設定ミスを削減するようにしました。 これは、メールマガジン制作メンバーも手動で作るよりも安心して使えるようになり、より従来の業務フローを改善するという心理的ハードルを削減できるのではないかと仮説を立てたからです。

MVPを定めてプロトタイプから小さく早く検証する

ユーザーが本当に求めている価値を仮説だけで組み立てることは現実的に不可能で、仮説を素早く検証・改善し続けることでしか本当の意味で価値を生み出すことはできません。そこでMVPを作ることが必要となります。

ただし、ここで気をつけないといけないことは、MVPは想定するプロダクトの一部を表現するものではないということです。

つまり、完全ではなくても、想定するプロダクトの全体像がわかる状態でなくてはなりません。仮説を検証するために必要な機能・不要な機能を見極めることが、MVPを開発する上で重要な要素となります。このMVPを持って小さく素早く改善のサイクルを回します。

MVPとは

参考:Minimum Viable Product (MVP) and Design - Balancing Risk to Gain Reward

我々は上記のプロセスで可視化した課題とそれに対しシステムによる仕組み化を行ったアウトプットを、Figmaで作ったプロトタイプを使いメールマガジン制作メンバーにヒアリングをしました。

Figmaによるプロトタイピング

その後は動くものベースで開発環境でプロトタイプを作り実際に触ってもらいながらテンプレートの精度を高めていきました。

定性の声と定量データを元に改善を繰り返す

実際に機能リリースした後も定期的にフィードバックをもらい、より使いやすいものにしていきました。(画像はNotionで機能要望を吸い上げ、仕組み化したスクリーンショットです。)

機能改善シート

あわせて、新しい業務フローの中でメールマガジン制作業務を行うことでデータがシステムに蓄えられます。どのような訴求であれば、どのような会員に対してどのくらいの反応をもらえたのかが可視化したダッシュボードも作成しました。

分析用ダッシュボード

その事により、より一層改善のサイクルを前のめりに行ってもらえるようになり、結果、質の向上と合わせメールマガジン作成本数も増加し、売上を30%以上増加させることに大きく寄与しました。

つまり、仮説を立てて設計・開発し、データ・ユーザーからのフィードバックをもらって、そのフィードバックをもとに課題を抽象化・汎化してまた仮説を立てるというサイクルを愚直に早く回していくことでプロダクト価値を高めることにつなげていきました。

改善のサイクル

最後に

Visionalグループには「その行動で、ブレイクスルー」という、「誰かの主体性に頼ることなく、自らが事業やサービスのオーナーシップを持って考え、発言し、行動していこう。」というバリューがあります。「BizHint」の事業に携わる私たちも、各々がオーナーシップを持って職務を越境しながら事業づくりを行っています。また、今回の取り組みのような、事業を推進するためのチャレンジに対してはチーム全員が背中を押してくれる文化があり、そんななかで時には失敗をしながらも、プロダクト開発を推進しています。

「BizHint」はサービス開始以降、会員数は50万人を越え、日本全国の企業が抱えるIT/SaaS活用やDX推進などに関する課題解決を更に加速すべく、今後も事業経営体制を強化していきます。エンジニアリングのスキルを持ちながら広い視点で事業づくりに関わりたい方がいらっしゃいましたら、ぜひこちらからお声がけください。最後まで読んでいただきありがとうございました。

JOJO
JOJO

週5でサウナに通うソフトウェアエンジニアです。たまにiOSアプリも作ってます。