即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」でプロダクトマネージャーを担当している原田と申します。
「ビズリーチ」は、採用企業様、ヘッドハンター様、求職者様それぞれに特化した機能を提供しています。私はこのうち採用企業様向けの領域を担当しております。

この記事では、採用企業様向け領域において、機能、利用者、データ等の急速な拡大に比して顕在化する「表示速度・処理速度上の問題」を解決するために、クロスファンクショナルなチームが協力しあい、本質的な課題に優先度をつけ、大きな改善を果たしたプロセスをご紹介します。

背景 | 「表示速度」の課題

「ビズリーチ」は累計27,000社以上の企業様に導入いただいており(2023年10月末時点)、急成長を続けています。
これに伴い、データ量の増加とシステムの負荷が増大しており、お客様からのフィードバックと自らが利用した経験を通じて、この「表示速度が遅い」という問題に気づき、改善を目指しました。

これにより、特に採用活動が活発なお客様ほど表示速度の問題が顕著になることが分かりました。表示速度が遅いと、レジュメの閲覧やスカウト送信、面接などのプロセスに影響がでてきます。多くのお客様が「ビズリーチ」を採用活動の主要ツールとしているため、これは重要な課題です。

信頼性ダッシュボード
各エンドポイントごとのLatency等をまとめた信頼性ダッシュボード

本質的な課題解決への取り組み

いざ「プロダクト上の問題を解決しよう」となった際に重視する点があります。それはVisionalグループのバリューとしても掲げている「お客様の本質的課題解決」です。そのために、単に「改善できる点」ではなく、「顧客体験上、真に改善すべき点」に焦点を当てます。
今回は、「利用が多い画面」や「採用において重要な画面」の遅延に対して焦点を当てました。改善すべき箇所の解像度を高めるために、既存のモニタリングツール(Datadog APMなど)を使用し、事業価値と顧客価値を最大化するための以下の「2つの軸」で優先順位を決めます。

優先度検討方針

ある画面でどれだけ表示速度を大幅に改善したとしても、その画面自体使っているお客様が多くない場合、顧客価値も限定的になります。使っているお客様が多い画面だったり、処理速度が重視される処理等において遅延してしまうことが、お客様にとって大きな課題になります。

そのため、徹底的にこの「顧客価値」に特化した形での優先度策定と改善の推進を実施しました。このアプローチにより、以下の4つの機能に改善の焦点を当てました。

スコープを上記の4画面のみに絞り、短期で課題の発見と解決を集中的に行うことを本プロジェクトの骨子に据えました。

プロジェクトの発足 | クロスファンクショナルチームの構成

お客様の課題を正確に理解し、中長期的な運用を含めて形にするために、様々なスキルを持つ人々が協力する必要がありました。そのため、部門横断的なクロスファンクショナルチームを組成し、DBRE、SRE、エンジニア、PjM、PdMが協力して取り組みました。

常に目線が合った状態でプロジェクトを推進していくべく、まず最初にキックオフを実施。
そこでは現状の課題を踏まえた方針を共有・議論しつつ、どういう形態でプロジェクトを実施すべきか、の議論をしました。

この中で特に重要だったのは、お客様の課題に対する解像度を高めることです。どういう採用体制で、どんな運用をしているか、という具体までイメージを擦り合わせることにより見えてくる課題も多くあります。

大手企業のお客様、中小企業のお客様、両者ともに多くのご活用をいただいており、両者それぞれのことを考えてプロダクト改善を行う必要があります。
もちろん、利用パターンやデータ量も利用体制も異なる状況です。それぞれの課題を解決するために、Datadog APMでLatencyをみる際に以下で解決を行う方針としました。

常に、P50を規定水準に納めるだけでなく、P99やMAX値も改善すべき指標として、毎日モニタリングを実施しつつ、解決のHOWについて日々議論を行いました。

速度の重要性

プロジェクトの運用 | 定例会議と各専門分野の強みの活用

Datadogをベースにしたモニタリングを行いつつ、エンジニア、DBRE、SRE、PjM、PdMがそれぞれの専門知識を生かすべく、クロスファンクショナルなチームで役割分担を実施しました。

という形で各種強みが最大限発揮しうる形で役割分担を行い、以下の改善ループを週次の定例MTGで高速に回していきました。

モニタリング(+ヒアリング)
→ 課題特定
→ HOW(改善案)の検討
→ 改善案の実施
→ モニタリング

モニタリングの際は、Datadogで把握しうるLatency等の定量数値だけでなく、カスタマーサクセスやお客様へのヒアリングを実施して定性側面の課題を特定することにより、
「どういった状況(処理)で遅延が発生しうるか」
を高速で特定することができます。
この部分をPdMの私が把握し、加えてそのお客様のサービスデータを分析し、「課題のあたり」をつけ、エンジニア・DBREチームに渡し、議論を実施。Datadogにて、それがSQLによるものなのか、アプリケーションサイドによるものなのかを特定し改善を日々行なっていきました。

データと表示速度の相関
サービス上のあるデータと表示速度の相関

「どういう状況のお客様が遅くなる傾向にあるのか?」を特定できるだけで一気に問題の特定に繋がるケースもあります。そのため、BigQuery上に蓄積されたサービスデータと、Datadog APMで計測した各Latency(P50,P75,P99等)を突合し、相関関係を見ることで、課題特定のあたりをつけるまでの時間を短縮しました。

成果

レジュメの表示にかかる時間
レジュメの表示にかかる時間

効率的な改善サイクルと顧客重視の方針により、4ヶ月で、スコープを定めた「重要な画面」の表示速度が大幅に改善されました。一部の画面では表示にかかる時間が50%以上削減し、その中にはレジュメの表示速度などの採用業務における非常に重要な画面も含まれます。

これにより、1ヶ月あたりでご利用いただく採用企業様全体で数千時間もの工数削減に貢献しました。現在も、お客様からのポジティブなフィードバックを受け取りながら、改善とモニタリングを続けています。

おわりに

私たちは、新規機能の開発だけでなく、システムの性能や安定性などの非機能要件においても、「お客様の本質的課題解決」を大事にした優先度判断で、改善を行っています。このように優先順位をしっかりと決めて改善を行うことで、お客様へ届ける価値を早く、大きくすることができ、このような積み重ねを経て社会にとっても大きなインパクトを与えることが可能です。

「ビズリーチ」はサービス開始以降、2万社を超える企業様にご利用いただいており、これほど多くのお客様を持つプロダクトだからこそ、私たちは日々の業務に大きな影響力を感じることができます。

ビジネスの視点も重視しつつ、非機能要件の改善に関心がある方は、どうぞお気軽にご連絡ください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

原田 要一
原田 要一

ビズリーチ事業部 プロダクトマネージャー