はじめに

ビズリーチの検索基盤グループでマネージャーをしている山本です。 私たち検索基盤グループは、日々数百万件の求人・レジュメデータと向き合い、求職者と企業の最適なマッチング機会の創出を「検索技術」で支えています。

2026年3月10日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて4年ぶりに東京で開催されたグローバルカンファレンス「ElasticON Tokyo 2026」に参加してきました。本イベントは検索・AI・オブザーバビリティなど幅広いテーマが扱われますが、今回は私たちの日頃のElasticsearchの大規模運用と高度化の取り組みをご評価いただき、ブレイクアウトセッションに登壇する機会を得ました。

本記事では、私たちの登壇内容のハイライトをお届けするとともに、会場の熱気や、次世代の検索基盤を作る上で見逃せない「検索とAIエージェントの融合」といった最新技術トレンドをレポートします。

登壇セッションの紹介

セッションでは「複数クラスタ運用と検索の高度化:ビズリーチにおけるElastic活用事例」というタイトルで、 発表を行いました。

登壇する加藤の写真
検索エンジニア 加藤遼

検索エンジニアの加藤がスピーカーを務め、「ビズリーチ」におけるElasticsearchの活用として、主に以下の2つのテーマを発表しました。

  1. 複数クラスタ運用による安定化と25%のコスト削減

    以前はモノリシックな単一クラスタで複数サービスのインデックスを管理していましたが、サービス間のリソース干渉が大きな課題となっていました。機能や要件ごとにクラスタを分離するリアーキテクチャを進めた結果、パフォーマンスの安定性が大幅に向上。さらに、リソース配置の最適化により約25%のインフラコスト削減を実現しました。

  2. HR特化の自社学習SPLADEモデルによるハイブリッド検索の実現

    キーワード検索だけでは拾いきれない「意味的なマッチング」を補完するため、HR領域(求人・職務経歴等)のドメイン知識に特化した日本語SPLADEモデルを自社で学習し、スパースベクトル検索を導入しました。従来の検索体験を大きく変えずにハイブリッド検索へ移行できるSPLADEの強みを活かした取り組みです。

具体的なアーキテクチャや学習の工夫については、ぜひ以下の発表資料をご覧ください。

会場の様子

キーノート

午前中のキーノートでは、Elasticsearch株式会社の最新プロダクトビジョンに加え、Google・Azureとの連携事例やユーザー企業の活用事例が紹介されました。 AIエージェントとコンテキストエンジニアリングが全体を通じたテーマで、検索がAIの中核インフラとして位置づけられている印象を受けました。

キャディ株式会社からは製造業における図面の類似検索にセマンティック検索を活用している事例が紹介され、ドメイン特化の検索活用という点でビズリーチとの共通点も多く、印象に残りました。

キーノートのタイトルスライド

ブレイクアウトセッション

午後のブレイクアウトセッションでは、Elasticsearchの検索ロードマップや各社の活用事例が発表されていました。 後半のユーザーディスカッションでは、株式会社ぐるなび・株式会社10X・株式会社miibo・Elasticsearch株式会社のメンバーが登壇し、検索とAIの今後について率直な議論が交わされていました。

ElasticONで感じた技術トレンド

カンファレンス全体を通して、いくつかの技術トレンドを強く感じました。

コンテキストエンジニアリング

キーノートから複数のブレイクアウトセッションまで、コンテキストエンジニアリングというキーワードが繰り返し登場していました。 AIエージェントがビジネスコンテキストをリアルタイムに統合して活用するという考え方で、コンテキストの不足・分散・断絶をどう解決するかが多くのセッションで共通のテーマになっていました。

AIエージェント

Agent Builderが2026年1月にGA(一般提供)となり、Elastic Workflowsがテクニカルプレビューとして公開されています。 ワークフローをYAMLで定義し、リランキングやスキル・ツール・MCPと組み合わせてエージェントを構築するアプローチが紹介されていました。 Microsoft Agent 365による数万規模のエージェント管理の話もあり、エージェントの運用・管理が次の課題になりつつあることを感じました。

検索の高度化

Elasticの検索ロードマップセッションでは、検索の精度向上を3段階に分けた「Search relevanceピラミッド」という考え方が紹介されていました。

  1. Retrieval: Retriever APIによるハイブリッド検索(RRF・Linear)で候補を取得
  2. Fine-tuning: クエリルールやフィルタリングで結果を調整
  3. Late-stage Reranking: セマンティックリランキングで最終的な精度を高める

Retriever APIによってこれらのステージを宣言的に組み合わせられるようになっており、検索パイプラインの設計がより柔軟になっています。

また、ベクトル検索の効率化としてBBQ(Better Binary Quantization)が紹介されていました。 32倍の圧縮で95%のメモリ削減を実現し、Elasticsearch 9.1ではデフォルトになる予定とのことです。 さらにDiskBBQにより、ベクトルデータをディスク上に配置して全量をメモリに載せずに検索できるようになり、大規模なベクトル検索のコスト面での障壁が下がりそうです。

全体を通しての所感

カンファレンス全体を通して、検索とAIエージェントの融合が進んでいることを強く感じました。 単にベクトル検索を導入するだけでなく、ドメインに応じた検索戦略の使い分けや、エージェントによるコンテキスト統合が重要になってきています。 ユーザーディスカッションでもベクトル検索が万能ではないという率直な議論があり、実務者同士の知見共有の場としても貴重でした。

懇親会も兼ねたユーザーディスカッションで流れたElasticsearch生みの親Shay Banon氏からのビデオレター

Retriever APIによるマルチステージ検索やBBQ/DiskBBQによるベクトル検索の高速化や効率化は、ビズリーチの検索基盤でも活用を検討していきたい技術です。 また、コンテキストエンジニアリングやエージェントの概念は、HR領域のマッチング精度を高めるうえでも重要なテーマになると感じています。 カンファレンスで得られた知見をチームに持ち帰り、今後の検索基盤の進化に活かしていきます。

まとめ

ElasticON Tokyo 2026への登壇・参加を通じて、Elasticsearchエコシステムの最新動向に触れるとともに、自社の取り組みを外部に発信する良い機会となりました。 AIエージェントやコンテキストエンジニアリングといったトレンドの中で、検索技術がどのように進化しているかを肌で感じることができました。

「ビズリーチ」では、検索・推薦・生成AIの技術を組み合わせてHR領域のマッチング機会の精度を向上させる取り組みを続けています。 こうしたカンファレンスへの登壇や技術ブログの発信を通じて、技術コミュニティへの貢献も大切にしています。

検索基盤の技術課題に興味のある方は、ぜひお気軽にお話ししましょう。

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山本 凌平
山本 凌平

ビズリーチ事業部エンジニア。ビズリーチサービスのコアとなる基盤をいい感じにつくるお仕事をしている。いつのまにか検索基盤グループのEMになっていた。